時 静物画
この作品には画面全体の対角線の交点に鳥の目が描かれ、くちばしがリングのほぼ中心に配されています。また砂が落下する砂時計の中心線に対して、机上に置かれた植物などはそれと直行するようにほぼ水平に並べられています。漆黒の空間をともなうこうした安定した構図のこの作品は、それ故にまた、きわめて厳格で崇高なる精神的空間を表出しています。長谷川が1970年代までにメゾチント＊で制作した静物画はおよそ40点。本作品は真理の探究に努めてきた長谷川が、齢77を迎えたときに到達した頂点といえる作品です。様々な画面上のオブジェにはそれぞれ異なる意味が与えられています。小鳥は長谷川自身、リングは人間の業績とその大きさ、砂時計は運動・はかなさ・時間、植物は生と死などの象徴として描かれています。人生の晩期を迎えた作者の、時間との葛藤や仕事への問いかけが象徴的に表現された作品です。
| 技法 | マニエル・ノワール |
|---|---|
| 画寸 | 26.4 × 35.4 cm |
| 制作年 | 1969年 |
| 限定部数 | 80 |
| サイン | 本人サイン |
| 在庫状況 | 売却済 |
長谷川潔について
大正・昭和期に活躍した日本の版画家。1918年（大正7年）にフランスへ渡り、様々な銅版画の技法を習熟。特にメゾチント（マニエール・ノワールとも）と呼ばれる古い版画技法を復活させ、独自の様式として確立させたことで有名。渡仏して以来、数々の勲章・賞を受けたが、一度も帰国せずにパリで没した。
